カルチャー

〈駿府の工房 匠宿〉伝統工芸を未来へと繋ぐ場所。

「駿府の工房 匠宿」は静岡・駿府に受け継がれてきた伝統工芸が過去から現代に、そして未来へとつながっていく場所。

少し敷居が高いと思える伝統工芸も、ここを訪れると自然に「日々の暮らしに取り入れてみたい」そう感じさせてくれるのです。

伝統工芸を未来につなぐ、体験型複合施設「匠宿」

匠宿は4つの工房と伝統工芸館、2つのカフェ、ショップが一体になった“伝統工芸体験”がテーマの複合施設です。

匠宿の外観

▲エントランスを抜けた先には工房やセレクトショップなどの建物が囲む中庭が現れる。

それぞれの工房では竹細工・駿河竹千筋細工をはじめ、染めものや木工などこの土地が受け継ぎ、守り続けてきた伝統工芸体験を楽しめます。

伝統工芸館には様々な工芸品が展示されているほか、時期によってはひとつの工芸品にスポットを当てた興味深い企画展も開催されるのだそう。

2つあるカフェのひとつ「The COFFEE ROASTER」では厳選した豆の焙煎からこだわり、手間ひまかけた1杯を提供してくれます。
細やかな手仕事が至高の一品を作り出す“伝統工芸の職人”を思わせるこだわりを感じさせてくれます。

もうひとつのカフェ「HACHI&MITSU」はその名の通り、地元・丸子の蜂蜜を使ったメニューを展開。
県内産の食材を多く使うなど静岡の魅力が凝縮されたカフェなのだとか。

匠宿のエントランスの売店には食品をはじめとした静岡土産が並ぶ

▲エントランス内のショップには食品をはじめとした静岡土産が数多く並ぶ。

ショップは、エントランス内にある食品をはじめとした静岡土産が揃うショップと、ひとつひとつ職人が丁寧に作り上げた工芸品や豊かな暮らしに一役買ってくれそうなアイテムが揃うセレクトショップ「tetoteto(てとてと)」があります。

アート作品も置かれた中庭は心地よい空間に

アート作品も置かれた匠宿の中庭①
アート作品も置かれた匠宿の中庭②

▲アート作品も置かれた中庭を心地よい風が抜けていった。
時間帯によっては木漏れ日が差し込むチェアに身を委ね寛ぐ人も。

静岡駅から20分ほど車を走らせた東海道の宿場町・鞠子宿に匠宿はあります。
歴史を感じさせる建物や、名物のとろろ汁を味わうことができる老舗が立ち並ぶこの場所は、なだらかな山々に囲まれていて、なんだかここだけには穏やかな時間が流れているような気もします。

匠宿の敷地内には中心を取り囲むようにいくつかの建物が点在していて、それぞれの建物から伸びた庇が独立した建物同士をつなぐ回廊のような役割を果たしています。
中庭へはアート作品やチェアも置かれていて心地よい空間づくりがされています。

繊細で優美な伝統工芸「駿河竹千筋細工」体験を楽しむ

細い丸ひごを球体のように加工した優美な印象の駿河竹千筋細工

▲球体のようなかわいらしいフォルムの花器も自分の手で作ることができる。

この日ここを訪れた目的は伝統工芸「駿河竹千筋細工」を体験するため。

他の地域でも伝統工芸として竹細工がありますが、静岡・駿府では竹ひごを丸く加工した“丸ひご”を熱しながら曲げ、一本一本組んでいくというもので、この技法はこの土地ならではなのだとか。
そのため、駿河竹千筋細工を特徴付けるのは“繊細で優美な外観”にあると言われています。

工房に入ると製作風景の実演をしている職人さんが気さくに来訪者と言葉を交わしている姿も印象的です。

匠宿の体験レポートはこちら:〈匠宿で体験する駿河竹千筋細工〉イッシュウカンの取材手帖-11ページ目

“100年続くブランド”を目指す「ミナ ペルホネン」と伝統工芸のコラボも

匠宿に用意された体験メニューはどれも魅力的ながら、現地を訪れて「これはやってみたい!」と強く興味を惹かれたのがファッションブランド「ミナ ペルホネン」とコラボした染めもの体験です。

ミナ ペルホネンは東京スカイツリーや青森県立美術館のユニフォームデザインも手掛けるデザイナー・皆川明が立ち上げたブランド。
ファッションのみならず家具や器など幅広く活動しています。
染めもの体験で使われるのは、匠宿のための書き下ろし図面なのだそう。

匠宿に用意された染めの特別体験「ミナペルホネンを染める」のサインボードと体験で制作できるバッグやシャツの見本
染めの特別体験「ミナペルホネンを染める」体験で制作できるシャツの見本

▲ミナ ペルホネンとコラボした染めもの体験。
準備の都合上、3営業日前までのWEB予約が必要だ。

1995年、ミナ ペルホネンを立ち上げた時に紙に書いたのは「せめて100年続くブランド」。
この想いは今も変わることなく、人と暮らしに寄り添うファッションを創造し続けるミナ ペルホネン。
その一方で何代にもわたって受け継がれてきた伝統工芸。
この2つがコラボして一つの作品として仕上がるということにとても心惹かれるのです。

しかしこの体験、準備の都合上なんと“体験日の3営業日前まで”にWEB予約が必要なのだそう。
今回の旅では泣く泣く断念をしました…。興味のある方は是非とも早めのご予約を!

セレクトショップ「tetoteto」で“今”に溶け込む伝統工芸と出会う

こういう場所に来たらお土産として伝統工芸品を手に入れたくなるものですよね。

“作り手の手から、使い手の手へ”がコンセプトのセレクトショップ「tetoteto」では職人の息遣いすらも感じらそうな工芸品から、モダンなアレンジが加えられ現代のライフスタイルにマッチするプロダクトまで数多く揃っています。

tetotetoの入口と横に置かれた看板
tetotetoの店内

▲tetotetoではトラデショナルなものから現代ライフスタイルに溶け込むモダンなものまで豊富に揃う。

店内を少し見てまわるうちに暮らしの中に取り入れてみたいと思える一品と出会えるはず。

創造舎が手掛けるのは、暮らしの中に文化が息づく街づくり

“伝統工芸体験施設”というとなんだか地味でお堅いイメージがありますよね。
でも匠宿を訪れるとそんな先入観は打ち砕かれるはず。

匠宿の運営を担うのは、静岡で病院や集合住宅、戸建住宅の設計・施工などを手がける「創造舎」。

暮らしの根幹である“住まい”に関わる企業だけあって洗練された空間づくりや、惹きつける見せ方が上手く、気がつくと伝統工芸の世界にぐっと引き込まれているのです。

細部に至るまで徹底してこだわったつくりこみからは、創造舎の伝統工芸や地域に対する強い想いがヒシヒシと伝わってきます。

匠宿が手掛ける人宿町の街並み
人宿町の人気カフェRossiの外観

▲新旧様々な建物が入り混じる人宿町は多くの人で賑わっていた。
通りの至る所で創造舎のロゴにも使われる赤色のサインが見られる。

創造舎が手がけるのは匠宿や単体の建築だけに留まりません。
匠宿のある鞠子宿や静岡駅から程近い人宿町などで、かつての賑わいを感じさせるような街づくりにも積極的に取り組んでいます。

街づくりといっても再開発で全く新しい街に置き換えるというわけではありません。
むしろ古いビルをリノベーションしたりと、かつての街の延長線上にある街づくりを進めているように思えます。

創造舎の街づくりも匠宿も、古いものと現代のものがとてもうまくミックスされているから魅力的に映り、惹きつけられてしまうのかもしれませんね。

text:Tomoki Sasaki

匠宿

◇ 静岡県静岡市駿河区丸子3240-1  
鉄道-静岡駅下車で路線バスに乗り換え約30分 
車-静清バイパス丸子ICより200m(東名道利用は静岡IC/新東名利用は静岡スマートICよりそれぞれ約15分) 
OPEN-10:00~19:00 
休-月 
HP-https://takumishuku.jp/index.html

インテリアにも映える「駿河竹千筋細工」の体験を匠宿で

〈匠宿で体験する駿河竹千筋細工〉イッシュウカンの取材手帖-11ページ目

単体では伝統工芸品らしい魅力が存分に溢れ出る駿河竹千筋細工。
実は北欧風やモダンなインテリアの中に置くと、スッと溶け込みながらもいい具合に存在感を放ってくれるんです。

匠宿では体験時間や作りたいものに合わせた数種類の駿河竹千筋細工体験が用意されています。
作ったものはそのまま持ち帰れるから旅の思い出にもピッタリ。

生活道具店「niguramu(ニグラム)」で出会った型九谷

〈KATAKUTANI(型九谷)〉イッシュウカンの取材手帖-2ページ目

金沢といえば色彩豊かな九谷焼ですよね。そうは言っても絵柄の付いたお皿って他と馴染むかな?と気になってなかなか手が出せないのも事実…。

金沢のniguramuで出会った型九谷は無地の九谷焼。日々の食卓にも使いやすい一枚がきっと見つかります。

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