カルチャー

〈匠宿で体験する駿河竹千筋細工〉イッシュウカンの取材手帖-11ページ目

こんにちは、イッシュウカンのササキです。

北欧スタイルに和のテイストを掛け合わせた“ジャパンディ”と呼ばれるインテリアに近年注目が集まっているのだそうです。

“Japanese”に北欧を意味する“Scandinavian”を掛けた造語で、北欧のシンプルながら深みのあるデザインに和が持つ静けさや侘び寂びを上手く取り入れたスタイルのこと。

ジャパンディは欧米発のトレンドで、多くの日本人にとって“古くさい”とか“地味だ”と思われるものでも、違った視点から見るとそこには美が潜んでいて、新たなスタイルを生み出すヒントになっていたのですね。

静岡・駿府に伝わる繊細で優美な駿河竹千筋細工

「我が家にもジャパンディを!」というほどではないけれど、以前から和のテイストを感じられるモノを部屋に取り入れてみたいなと思っていました。
そんなときに伝統工芸「駿河竹千筋細工(するがたけせんすじざいく)」を体験できる場所が静岡にあると教えてもらい足を運ぶことに。

竹細工を楽しみつつ、作ったモノは自宅のインテリアとしても飾れるのだから行かない手はないですよね。

匠宿で作った丸いフォルムが特徴の駿河竹千筋細工の花器
匠宿で作った高さがありすらっとしたシルエットが特徴の駿河竹千筋細工の花器

▲匠宿で作った2種類の花器。
単体では和の雰囲気を存分に感じられるが、現代的なインテリアにもスッと溶け込む。

駿府の伝統工芸は世界へと

駿河竹千筋細工は静岡・駿府に伝わる竹を使った伝統工芸です。
安倍川・藁科川の流域では古くから質の良い竹が生産されていて、竹細工が盛んだったのだそう。

江戸時代には竹で編んだ籠枕が東海道を行き来する人々の間で評判になり、全国的に「駿河細工」として認知されたといいます。

その後、1873年(明治6年)に開かれた日本として初の公式参加でもあったウィーン万国博覧会に駿河竹千筋細工の鳥籠が出展され、オリエンタルな雰囲気と繊細な美しさが諸外国から高い評価を受け、海外向けに輸出も行われるようになるなど世界的にもその名が広まったのだとか。

全国各地で様々な竹細工が受け継がれる中、この地域で作られているものにはちょっと変わった特徴があります。
それは一般的には竹を平たく加工した“平ひご”を編んで作るのに対し、駿河竹千筋細工では細く割った竹を円形に削った“丸ひご”を組んで作る技法であることです。

これは丸ひごを使った虫籠や鳥籠であれば中に入れた生き物を傷つけずに済むからということなのだそうですよ。

匠宿で体験する駿河竹千筋細工。伝統工芸にふれあうひととき

駿河竹千筋細工が体験できるのは、東海道の宿場町の一つ鞠子宿にある「駿府の工房 匠宿」。
漆塗や陶芸など“今川・徳川時代から静岡に受け継がれてきた伝統工芸”の数々を体験できるのが特徴です。

駿河竹千筋細工の体験ができる匠宿

▲静岡市内にあるかつての宿場町・鞠子宿に作られた工房。
駿府に受け継がれる伝統工芸の体験工房、ショップ、カフェが一体になったアートな雰囲気が漂う施設。

駿河竹千筋細工の体験メニューに用意されているのは所要時間30分ほどで仕上がるコースターのような手軽なものから、少し複雑な形をした花器を作る60分ほどのコースなど、体験時間や作りたいものに合わせてさまざまです。

この日僕らが挑戦したのは球体を思わせる美しいフォルムが特徴の花器と、高さのあるすらっとしたシルエットで存在感抜群の花器の二つ。

どちらも真ん中にぐるりと一周するように取り付けられた竹の枠が良いアクセントに。

製作キットには、上下と真ん中のそれぞれ3つの枠、丸ひご、網代編み技法を取り入れた底にあたるパーツが含まれています。

それぞれの枠には丸ひごを通すための穴開けがされていて、丸ひごは作るものに合わせた曲げ加工が施されています。

一本一本組み上げていく難しさに竹細工の奥深さを知る

下枠に丸ひごを差し込んでいく様子①
下枠に丸ひごを差し込んでいく様子②

▲下枠に網代編みを施した底板を取り付けたら丸ひごを一本一本差し込んでいく作業に移る。

作り方が書かれた紙を読みつつ、工房の方のアドバイスをもらいながら製作に取り掛かりました。
まずは底のパーツを一番下の枠に収まるように丸く切り抜いてはめ込む作業から。
天然素材である竹の温もりを作業中にも感じられます。

続いて真ん中の枠に開けられた穴に丸ひご一本一本を手で通し、そのまま下枠に差し込んでいく作業。
用意された丸ひごの山が減っていくにつれ、花器が少しずつ形作られていく様子はとても楽しく作り甲斐があります。

上枠に丸ひごを差し込んでいく様子①
上枠に丸ひごを差し込んでいく様子②

▲上の枠に丸ひごを取り付ける際はひっくり返すとやり易いのだとか。
集中力も切れてきた中で微妙な力加減の調整が難しい。

これが終わればいよいよ最終段階。
丸ひごのもう片方の端を上の枠に差し込んで固定していくだけです。
工房の方の「上下をひっくり返して差し込んでいくとやり易いですよ」との助言を受け、言われた通りにやってみるもなかなか大変です。

曲げ加工が施された丸ひごとはいえ、力加減を誤ると折れてしまいそうだし、場合によっては差し込み終えた丸ひごが外れてしまうこともあるんです。
悪戦苦闘を繰り広げた末に全ての丸ひごを上の枠にも差し込み終え、接着剤で固定をして無事完成しました!

竹特有の経年変化。使い続ける楽しみのひとつに

作った花器にドライフラワーを入れて飾っている

▲自宅に持ち帰りドライフラワーを入れたビンを中に入れてみた。
洋室に置かれた木製のシェルフの上にもよく馴染んでくれる。

「もし使っていて折ってしまっても送ってもらえれば修理できますよ、長く使ってくださいね」とのこと。
革や木製品など天然素材の特徴の一つは長く使った時の経年変化。
竹の場合、時間と共にツヤ感のある飴色へと変わっていくのだそうです。

どこへ飾ろうか、何を入れようかなと完成した一品を見るとワクワクするものです。

職人が手がけた品々の美しさに圧倒される

匠宿に入っている駿河竹千筋細工などの工芸品が並ぶショップ

▲施設内のショップでは駿河竹千筋細工をはじめとした工芸品や、暮らしを豊かにしてくれるアイテムが多数揃う。

匠宿では職人が手がけた商品を購入することも。
駿河竹千筋細工の伝統を受け継ぐ職人が生み出すのは、しなやかな曲線美を描く丸ひごが作り出す繊細で迫力のある品々。
茶托や花器、菓子器の他にも虫籠や照明器具など、そのどれもが引き込まれるような美しさを解き放っています。

作った花器を上から眺めたところ。等間隔に並ぶ丸ひごと球体のシルエットがよくわかる

▲使った花器を真上から見下ろすと等間隔に並ぶ丸ひごの美しさがよくわかる。

伝統工芸である駿河竹千筋細工は和室に映えるのはもちろん、現代的なインテリアや北欧風インテリアの中にもスッと溶け込みながらもさりげなく目を惹く存在感を醸し出してくれるのです。

text:Tomoki Sasaki

匠宿

◇ 静岡県静岡市駿河区丸子3240-1  
鉄道-静岡駅下車で路線バスに乗り換え約30分 
車-静清バイパス丸子ICより200m(東名道利用は静岡IC/新東名利用は静岡スマートICよりそれぞれ約15分) 
OPEN-10:00~19:00 
休-月 
HP-https://takumishuku.jp/index.html

“使い続けたい”、そう思わせてくれる伝統工芸の曲げわっぱ「入山メンパ」

イッシュウカンの取材手帖-7ページ目〈入山メンパ〉

中之条で作られる曲げわっぱ「入山メンパ」は、群馬県ふるさと伝統工芸にも指定されています。

地元の山から切り出された赤松や桜の木の皮から作られる入山メンパ。接着剤や金属釘を一切使わない伝統的な製法が守り抜かれています。

天然素材で作られた入山メンパの魅力は入れる食材などにもよって異なる経年変化です。いつまでも「使い続けたい」そんなふうに思わせてくれます。

生活道具店「niguramu(ニグラム)」で出会った型九谷

〈KATAKUTANI(型九谷)〉イッシュウカンの取材手帖-2ページ目

金沢といえば色彩豊かな九谷焼ですよね。
そうは言っても絵柄の付いたお皿って他と馴染むかな?と気になってなかなか手が出せないのも事実…。

金沢のniguramuで出会った型九谷は無地の九谷焼。普段使いにピッタリの素敵な器です。

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