僕らの体に占める約60%は水分らしい。
スポーツ飲料か何かのCMでそんなことを言っていた。
地球上の生き物は、大元を辿ると海の中に行き着くのだとか。
だからなのかわからないけど、人間どうしてだか海に惹かれるところがあると思う。
思い悩んだりとか、失恋だったりとか、とにかく嫌なことがあったら海辺(もしくは夕暮れの河川敷)に“癒しを求める”というのはドラマや小説なんかではお決まりだ。
静岡の旅で僕らが泊まった「焼津グランドホテル」は、優しげな海の気配をいつもそばに感じることができるオールインクルーシブスタイルの素敵なリゾートホテルだった。
焼津グランドホテル。中島屋ホテルズが手掛ける海辺の温泉リゾート
▲時代に合わせてアップデートを続ける焼津グランドホテルでは、常に快適な宿泊体験が楽しめる。
1969年に開業した焼津グランドホテルは、中島屋旅館として1916年に静岡で開業した「中島屋ホテルズ」が運営する、温泉付きリゾートホテルだ。
ミネラル豊富な焼津温泉とオールインクルーシブ、旅のスタイルから選べるバリエーションに富んだ客室が大きな特徴。
客室の種類は本当に多く、富士山と駿河湾を眺望でき、61㎡もの広さを持つ最上級の和洋室「海椿」や、同様に絶景を眺めながらゆっくり寛げる洋室のツインルーム「富士ビューデラックス」もあれば、スタンダードなオーシャンビューの和室、洋室、和洋室、現代的でシックなインテリアにまとめられた和モダン洋室などなど…。
時代に最適化されたオールインクルーシブスタイル
ここ最近、「オールインクルーシブ」という言葉を聞くことも増えてきたような気がする。
文字通り“全てが含まれている”ということで、一体どこに何が含まれているのかと言えば、宿泊代金にホテル内で提供される様々なサービスが含まれているということになる。
例えば、レストランやバーラウンジで提供されるアルコールを含むドリンク類から、フィットネスや体験プログラムなどの各種アクティビティといったサービスなんかが一般的。
海外のリゾートホテルなどでは以前より人気が高いスタイルだ。
▲フロントを抜けると、水平方向いっぱいに広がる駿河湾を望むラウンジが。
ここで提供されるアルコールを含むドリンク類やお菓子は宿泊代金に含まれる。
焼津グランドホテルでは、レストラン・ラウンジ・カフェで提供されるお茶やコーヒーなどのソフトドリンクに、ビール、日本酒、ワインといったアルコール類、抹茶体験(金、土、日限定)や映像を見ながらのヨガ体験、各種ボードゲームや卓球が楽しめる「大樹のこかげ」の利用、テニスやモルックといったアウトドアスポーツに、夏は屋外プールだって無料で楽しめる。
ライフスタイルが多様化した現代。
ホテルでの過ごし方だって十人十色。
全ての無料プログラムを楽しもうとしたらとても1泊なんかじゃ足りないのだろうけれど、数あるプログラムの中から自分が好きなものを選んで、自分らしい思い思いのひと時を送れるのだから魅力的なスタイルだと思う。
フロントを抜け専用ラウンジへ。目の前は水平方向いっぱいに広がる駿河湾
▲ベイテラスにでると、雄大な景色を眺めながら心地良い汐風を感じられた。
日本平から海沿いの道を走り続けていたが、大崩海岸を通り過ぎてからはトンネルと、右へ左へのカーブで海が見え隠れを繰り返しているうちにホテルへ到着した。
床に敷かれた落ち着いた色味タイルと、バランス良く使われた木が温かみを醸し出すフロントで、チェックインを済ませた。
「客室へ向かう前にひと休みを」と宿泊客専用のラウンジへ足を向ける。フロントからまっすぐラウンジへと抜けた先には、駿河湾の景色が広がっていた。リゾートホテルのフロントにしてはやや低めに思えた天井は、横いっぱいに広がる駿河湾と水平線に浮かぶ伊豆半島の雄大な景色を引き立ててくれているようだ。
▲ラウンジの奥側「クリフサイド」は、海へ突き出るように作られている。
“上品な大人の空間”が広がっていた。
せっかくなので大して飲めもしないワインとお菓子を片手に、窓側のラウンジチェアに腰をかける。
ラウンジと一体となった奥側にある空間「クリフサイド」は、さながら“上品な大人の空間”といった雰囲気だ。
中央に設えられたグランドピアノは日によってギターと交代での生演奏に使われているらしい。
▲翌朝、もう一度ベイテラスに出てみると“日本一深い湾”駿河湾と、“日本の最高峰”富士山が一望できた。
機能的なオーシャンビュー和洋室からは絶景も
この日泊まったのは東館7階のオーシャンビュー和洋室。
ツインベッドの置かれた洋室と、10畳の和室、広縁が一続きになった十分な広さを持つ、機能的で快適な客室だ。
ちょうど夕暮れが迫っていて、窓にうつる景色はブルーとオレンジに染まっていた。
過ぎてゆく時間と共に徐々に濃紺へと移り変わっていく様子をゆっくりと眺めることができる。
▲オーシャンビュー和洋室の海側にはソファーとテーブルが設らえられていた。
景色が濃紺へと移りゆく様子がよく見れた。
大樹のこかげ。楽しさが溢れ出す空間
「オールインクルーシブスタイルなのだからアクティビティも楽しまなくちゃ」ということでやってきたのはインドアプレイエリア「大樹のこかげ」。
森の大木をモチーフにしたようなオブジェや棚が配置されていて、本や各種ボードゲームなどが用意されている。
▲ライブラリー、ボードゲームコーナー、卓球台などを備える「大樹のこかげ」。
せっかくなので何か遊んでみたいなと選んだのが、「ito(イト)」というカードゲーム。
これがまた面白い。大人数でやれば大盛り上がり間違いなしで、実際に夕食後にもう一度訪れたときには、大学生と思われる男女グループがなかなかの盛り上がりを見せていた。
なんだか妙に羨ましいのでひっそりと大樹のこかげを後にした。
地下1,500mから湧き出る焼津温泉。サウナと眺望に癒される
温泉宿に来たからには温泉と夕食はどうしても外せないし、正直かなり楽しみにしていた。
焼津グランドホテルの大浴場は南館の「海のお風呂 〈海音・汐風〉」と、西館の「森のお風呂〈オリーブ〉」の2箇所。
どちらも露天風呂では焼津温泉を堪能できる。
焼津温泉は地下1,500mから湧き出る天然温泉で、塩分を多く含む弱アルカリ性のお湯は肌の潤いを保ち美容によく効くのだそう。
海のお風呂にある露天風呂では文字通り、海を見渡すことができる。サウナと水風呂も併設しているので、駿河湾の絶景を楽しみながらの“ととのい”なんてのも。
森のお風呂は建物の山側に位置していて、絶景を望めるわけではないが、寝湯や香り湯、ミストサウナなど内湯の種類が充実している。
「The Dining 炎の香」で味わう質の高いビュッフェ
▲メニューのいくつかはライブキッチンスタイルで提供される。
見た目も華やかで楽しい。
夕食は宿泊プランによって、地元で水揚げされた魚介をふんだんに使った季節を感じることができる懐石料理か、レストラン「The Dining 炎の香」でのビュッフェのいずれかを選べる。
僕らが選択したプランはビュッフェ。
富士山の溶岩石を使った石窯焼きのピザやステーキ、焼津らしさを味わえるお寿司や刺身、カツオ出汁のラーメンなどが用意されている。
意外にも、と言っては失礼かもしれないけれど、想像以上に気に入ったのがエビチリなど数種類のメニューが用意されていた中華料理のコーナー。
実は中島屋ホテルズが運営するシティホテル「中島屋グランドホテル」にある「静岡四川飯店」は、故・陳健一の流れを汲む静岡でもよく知られたホテル直営の中華レストランなのだとか。
グループホテルのディナービュッフェといえどもハンパなものは出せないという自信の程を窺い知ることができた。
▲やわらかな朝の光が入り込む朝食ビュッフェ。
メニューも豊富で気持ちの良い一日の始まりを迎えられた。
料理の味がいいのはもちろんだけど、浴衣姿でビュッフェを楽しむというのも温泉宿らしくてとても好きだ。
他の宿泊客の姿を見ても、皆がこのホテルで過ごすひと時を心から楽しんでいるといった表情をしている。
夜の客室からは、息をのむほど美しい光景が
▲客室から望む夜の光景。
水面を月光がキラキラと反射していた。
その夜、もう一度ラウンジを訪れてから客室へと戻った。
窓の外を見ると、眼下に広がる海面には“光の道”が続いていて、辿る先には空に浮かぶまん丸の月が輝いていた。
室内灯を全て消し、ゆっくりとソファーに腰をかける。
息をのむほど美しい光景に、いつまでも見ていられるような気がした。
こんな光景に惹かれるのは、深くどこまでも続く海が連想させる自由さだったり、雄大さだったりするのだろうか。
或いは、ただ日常があまりにも忙しなく過ぎるが故の逃避行のようなものなのかも。
text:Tomoki Sasaki
焼津グランドホテル
◇静岡県焼津市浜当目1489
鉄道-焼津駅からタクシーまたは送迎バスで約5分
車-東名道焼津ICから約10分
HP-https://www.sn-hotels.com/ygh/
京都で出会ったライフスタイルホテルという新しい街づくり
〈エースホテル京都〉ライフスタイルホテルってなんだろう? – その街の一部という在り方
京都で泊まった「エースホテル京都」はシアトル発“ライフスタイルホテル”の先駆け的存在。
デザイン性の高い空間と宿泊以外の付加価値をテーマとしていて、
その土地の文化との共生を考えたホテル作りという考え方は新しい京都の景色を生み出している。
「炭焼きレストランさわやか」の実力と魅力は唯一無二
〈炭焼きレストランさわやか〉静岡のローカルファミレスに魅せられて。
静岡県内だけで味わうことができるローカルファミレス「さわやか」のハンバーグ。
休日には1,2時間待ちも当たり前。
どうしてこれほどまで人気なのだろうか。
さわやかの唯一無二の魅力は食べた人を虜にする。
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