カルチャー

〈鯖江の眼鏡〉イッシュウカンの取材手帖-6ページ目

雪国にはある種の「力強さ」のようなものを感じます。

厳しい冬の寒さや、時に除雪をしても追い付かないほどに降り続ける雪との闘いは、一冬に僅か数回しか雪が降らない関東平野の街で生まれ育った私には想像も出来ない大変さがあるのだと思います。
それ故に雪国での暮らしは力強く魅力的に映るのかもしれません。

豪雪地帯のひとつ福井県鯖江は眼鏡フレーム造りが主要な産業の一つで、国産眼鏡フレームシェアの9割を超えると言われています。

雪と共に生きる街、福井県鯖江の眼鏡フレーム

実は鯖江が“雪深い地”であったことがこの産業が根付いたことに大きく関連しています。
農業が中心だった鯖江と周辺の街に、冬の収入確保のため増永五左衛門が都市部から職人を招き、この地に定着させたと言われています。
今から100年以上も前の1905年のことだそうです。

その後、職人から技術を受け継いだ地元の人々の手によってここまで拡大し「めがねのまち さばえ」として確固たる地位を築き上げているのです。

鯖江の眼鏡フレーム造りの大きな特徴はフレームの各部品をそれぞれの会社が製造し、最終的に組み立てられる“地域内分業”であることだそうです。

その為、地域全体がさながら“大きな眼鏡フレーム工場”のような役割を果たします。
一つひとつの部品に特化した職人が丁寧に作ることで高い精度と品質をもたらします。

その一方で、一人の職人が自身の名を冠し、一本の眼鏡フレームを作り上げることもあるのだそうです。

井戸多美男作、セルロイドとサンプラチナは美しく輝く

▲井戸多美男作 T-449Rはセルロイドとサンプラチナを組み合わせた美しい一本。
部品の一点一点から職人のこだわりと丁寧な手仕事によるものであることを感じ取れる。

先日ようやく眼鏡を新調しました。
以前から鯖江の職人の手によって丁寧に作られた眼鏡が欲しいと思っていたものの、なかなか手が出せず「繋ぎだから…」と自分に言い聞かせ手頃な眼鏡を使っていました。

しかし、いよいよフレームの精度や耐久性にストレスを感じてしまい、ずっと使い続けたいと思える眼鏡を探す旅に出ることにしたのです。

いくつかの店舗にお邪魔をして実物を見たりお話を伺ったりする中でようやく「これ!」と思える一本に出会うことができました。

今回私が手にしたのは「井戸多美男」によるセルロイドとサンプラチナを組み合わせた眼鏡です。
セルロイド特有の艶っぽい質感とメッキ処理されたサンプラチナの美しい輝きと質感が堪りません。

「MADE IN 鯖江」に込められた想いと歴史を知るとより一層愛着が沸くものです。
「長く使える一本を!」と思って選定したはずが、素敵な眼鏡を使っていると「外出用にもう一本…」などと底なし沼が現れてくるので要注意です。

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