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〈後藤鉱泉所のマルゴサイダー〉昭和5年創業。変わらぬ味を守り続けるレトロな地サイダー

連載:「旅して出会ったこんな店。」

旅先で出会ったあんな店やこんな店。定番からちょっと意外なメニューまで、旅を愛する食いしん坊におすすめしたい街の素敵な“食”を紹介するコーナー


昔懐かしい瓶入りのサイダーってなんだか心躍るものがある。

近年ではご当地サイダー人気もあって、各地で様々な工夫を凝らしたサイダーを楽しめるのだから嬉しい限りだ。

そんな中でも広島・尾道で出会った「後藤鉱泉所のマルゴサイダー」が印象的で忘れられない。

尾道水道の対岸に浮かぶ向島

後藤鉱泉所があるのは本土側とを隔てる細長い尾道水道の対岸に浮かぶ向島だ。
3つの航路がある本土と向島を結ぶフェリーの内、観光名所が集中するエリアに近い、最も東側の桟橋から「尾道渡船」に乗り込むこと僅か5分ほどで向島へ。
フェリーが到着した兼吉港からは歩いても5,6分もかからない。

実のところ、長年地元から愛され続け、全国放送のテレビ番組で取り上げられたこともある後藤鉱泉所のことは向島を訪れるまでは知らなかった。

兼吉港から望む尾道水道と尾道の街並み

▲泳いで渡れそうなほどの幅の尾道水道を小さなフェリーが頻繁に往来する。
尾道渡船は地域の足として活躍する3航路あるフェリーのひとつ。

レトロな外観にひかれるように後藤鉱泉所へ

「せっかく尾道に来たのだからレンタサイクルで近くの島を回ってみよう」くらいの気持ちで訪れた向島。
レンタサイクルを漕ぎ始めるやいなや、早々に現れたのが水色のサッシが嵌め込まれた昭和の面影を残すクラシカルな建物だった。

昔懐かしい外観と、ほの暗い店内に置かれたガラス扉の冷蔵庫の中で整然と並んでいる瓶入りサイダーに目を奪われ、立ち止まって中の様子を伺っているとお店の方に声を掛けられお邪魔することに。

店内には瓶ケースが雑多に積まれていてよく見かけるプラ製もあれば、いつの時代から存在するのか見当もつかないほどにレトロな木製のケースも混じっている。

瓶ケースが積み上げられた後藤鉱泉所のレトロな店内①
瓶ケースが積み上げられた後藤鉱泉所のレトロな店内②

▲外観に負けず劣らずのレトロが溢れる店内。

マルゴサイダー。昭和の機械が生み出す変わらぬ味

僕らが購入したのはここの定番商品でもあるマルゴサイダーだ。
創業の昭和“5”年と、後藤鉱泉所(ごとうこうせんしょ)の“ご”を掛け合わせたのが商品名の由来なんだとか。

程よい甘さの爽やかなマルゴサイダーを製造しているのは昭和30年頃から使われているものだというから驚き。
雰囲気はもちろん、その味わいも“昔ながら”ということらしい。

実は購入したサイダーはこの場で飲みきらなければならない。
それは「リターナブル瓶」と呼ばれる、回収・洗浄を経て再利用される瓶が使われているからだ。

幾度となく繰り返し使われていく中で、重厚感のあるリターナブル瓶の外側にできた傷さえも、より一層味わい深いものに感じさせてくれる。

リターナブル瓶に入ったマルゴサイダー

▲程よい甘さと爽やかな味わいのマルゴサイダーは、今となっては貴重な昭和の前期に製造された機械で作られている。

伝統のサイダーは、次の時代へと受け継がれてゆく

今、後藤鉱泉所を営むのは4代目で以前は別の自治体の職員をされていた方なのだそう。
2021年4月に引き継いで以降、伝統の味を守りながらも次世代へ繋ぐため、地元瀬戸田のレモンを使った「怪獣サイダー」やグッズなどの新商品も展開している。

後藤鉱泉所のサイダーには、携わる人たちのと熱意や尾道・向島の魅力もがぎゅっと詰め込まれているような気がする。

次に尾道を訪ねるときにはフェリーに乗って後藤鉱泉所に足を運びたいと思う。
むしろ後藤鉱泉所に足を運ぶために尾道の街を訪れたい、そうまで思わせる何かがここにはある。

text:Tomoki Sasaki

後藤鉱泉所(後藤飲料水工業所)

◇ 広島県尾道市向島町755-2 尾道渡船で向島まで約5分 向島・兼吉港から徒歩6分 OPEN-8:30〜17:30 休-不定期 HP-https://gotokosensho.base.shop

“映画の街”尾道で迎える特別な朝。

ISSUE 009 この街が迎える朝を知りたくて。〈広島県 尾道市〉

旅先の朝には独特なものがある。
“映画の街”尾道の朝の風景に誘われるように、2泊3日の旅へ出た。

尾道の本州側の街と、尾道水道を隔てた向島を自転車でぐるりとまわる。

ゲストハウス「あなごのねどこ」と「みはらし亭」に泊まって過ごした尾道は素晴らしく、もう一度この街を訪ねたいと思う。
さあ、次はどこへ泊まってどんな時間を過ごそうか。

シネマ尾道。映画の街の、小さなちいさな映画館

MIDNIGHT ISSUECAN #01 街に映画館があるだけで。〈シネマ尾道〉

いつだったかこんな言葉を聞いたことがある。
「街に映画館がひとつあるだけで、文化的生活レベルが格段に上がる。」

確かにそうかもしれない。
サブスクで気軽に映画が見れる時代になっても、やっぱり映画館の雰囲気というのは堪らなく素敵で替え難いモノがある。

シネマ尾道は、「映画の街」なのに映画館が無いことをなんとかしたいと河本清順さん代表の「尾道に映画館をつくる会」と多くの個人や企業の協力で作られたのだそう。

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