トラベル

僕らの街は、意外なところで繋がっている。後編 /ISSUE 003

イッシュウカンの週刊コラム: 飯能と深川 vol.3

前編中編で飯能と深川の関係性について話してきたが、元々の“西川材”の始点と終点という文化が現代ではそれぞれ形を変え、新しい文化として街に根付き始めている。


飯能は「metsä(メッツァ)」の誘致に成功し、それに続けと施設が次々と増えたことにより、“フィンランド化”というイメージを浸透させた。
メディアにも取り上げらたメッツァの登場が、大きく舵を切るきっかけになった事は明らかであり、“フィンランド化”の火付け役となった形だ。

多くの人々で賑わうメッツァ

宮沢湖の畔にできた「metsä(メッツァ)」は北欧のライフスタイルがテーマの飯能の新たなランドマーク。
「ムーミンバレーパーク」の他にも食事、買い物、自然の中リクライニングチェアで寛ぐことも。

新たに開業した発酵食品のテーマパーク

天覧山の麓にできた「OH!!!」は発酵食品をテーマにした体験施設。
天覧山ハイキングと共にカフェやショッピングなどを楽しむことができる。

その他にもフィンランドの文化として忘れてはならないのがサウナだ。
編集部員の深掘りレポートでも紹介しているが、飯能市に抜かりはなく、サウナーたちへのアピールも成功しているのか「ノーラ名栗」は土日は予約でいっぱいの人気施設だ。

ノーラ名栗のテントサウナ

「ノーラ名栗」は自然の中でテントサウナが楽しめる施設。
こちらは編集部員の深掘りレポートでも特集しています。

「自然・発酵・ムーミン・サウナ」見事に林業から“フィンランド化”へと新しい文化を築き始めている飯能だが、外から見ていてもこの変化に違和感は感じない。

メッツァという火付け役の存在が街全体を動かした訳だが、そこに林業や自然と共に暮らしてきた文化の下地があったからこそ、人々に無理なく受け入れられ、新しい文化として根付き始めているのだろう。 

清澄白河にあるブルーボトルコーヒーの外観

「ブルーボトルコーヒー 清澄白河フラッグシップカフェ」は、
清澄白河だけでなく、サードウェーブコーヒーブームの火付け役でもある。

深川の街も同じだ。
2015年に「ブルーボトルコーヒー」の日本一号店が誕生したことをきっかけに多くのカフェがオープンした。間違いなくこの街の火付け役だ。

こう言っては失礼だが、「ブルーボトルコーヒー」誕生前の深川には現代美術館こそあったものの、イメージとしては深川めしが有名な下町ぐらいだったはずだ。

それがどうだろう。メディアに取り上げられ、人が来る事がわかると次々に新しいカフェや店がオープンし始め、瞬く間に街は変わっていった。

週末にはこれまで訪れなかったであろう人々がカフェ目当てに訪れるようになり、それまで名前を挙げても伝わらなかった清澄白河という駅名が今では誰に言っても大抵伝わるようになっている。 

清澄白河に新しくオープンしたKOFFEE MAMEYA -Kakeru-の外観

去年オープンした「KOFFEE MAMEYA -Kakeru-」は、デザイン系企業の工場だった場所を改装したお店。
バリスタがカウンターに立って好みの豆の相談に乗ってくれるユニークなスタイルが特徴だ。

当時大学生だった私も突如地元が人で賑わうようになり、驚いたことを覚えている。
次々と訪れる若者たちの群れに自分の街が侵略されているかのような不思議な不気味さを感じたが、店が増えることで自分の街での暮らしも充実していった。

合わせてメディア等を通して、深川という街の成り立ちや、カフェやアートの街になった背景を知る機会も増えた。
新しい文化が根付くということは、これまで知らなかった街の文化を知るきっかけにもなるのかもしれない。

今回飯能と深川という二つの街についての話をしてきたが、いかがだっただろうか。
日本全国にはきっとこの二つの街と同じように意外と知られていない文化や、現代になりそれが新しい文化として形を変えている街がもっとあるのかもしれない。

また、新しい文化が生まれることでその街の成り立ちや文化を見つめ直すきっかけになるかもしれない。
そういったことをイッシュウカンでは「あの街について話そう。」を通して取り上げていけたらと考えている。

時代と共に街の文化や人も求められる形に変化する。
それが地域の忘れられている魅力を掘り起こすかもしれないし、新たな活気を生むかもしれない。
そう考えながらまた次の取材先へと出かけようと思う。

text: Masato Okada

コメント

コメントを残す

*