皆さんは民芸は好きですか?
民芸ってなんだかワクワクして心惹かれるものがあるんですよね。
先日、大阪に行く機会があり「市内の美術館で面白い展覧会でもやっていないかな」そんなことを考えながら調べていると、お隣吹田市の万博記念公園にある「大阪日本民芸館」で、ちょうど開館50周年を記念した特別展「濱田庄司と柳宗理-ふたりの館長-」が開催されていました。
万博記念公園までは大阪の中心部から40分ほどで行けるのだそう。
「万博記念公園といえば太陽の塔!」そう思い付くと、居ても立ってもいられずすぐに荷物をまとめてホテルをチェックアウトしました。
圧倒的な存在感「太陽の塔」
▲独特の造形もさることながら、カラーリングも美しいEXPO’70を象徴する太陽の塔。
行き止まり式のプラットホームがいかにもターミナル駅らしい雰囲気を醸し出す阪急電車の梅田駅からマルーン色の電車に乗り込みます。
途中モノレールに乗り換え、車窓に木々の間からそびえる「太陽の塔」が見え始めるとすぐに万博記念公園駅に到着しました。
1970年は生まれてもいなかったし、関東で育った僕にとってEXPO’70も太陽の塔も馴染み深いものではありません。
それでもきっと多くの人々が未来を夢見て、好奇心を刺激されて、日本中が沸いたであろうあの日を想像すると胸が熱くなるのです。
入園口で大阪日本民芸館と万博記念公園の入場がセットになったチケットを購入し園内に足を踏み入れると目の前には堂々とそびえたつ太陽の塔。
写真やイラストでは何度も見たことがあっても、実物を目の当たりにするとその存在感になんともいえない感動が込み上げます!
写真では気が付かなかったけれども、塔の頂上で輝く「黄金の顔」と、“首もと”とでもいうのでしょうか、顔が取り付けられている部分の鮮やかな青色のコントラストがとても美しいです。
▲背後に回り込むと“過去を象徴”する黒い太陽が現れる。
民芸運動の西の拠点 大阪日本民芸館
太陽の塔を後にし、公園の奥に向けて数分ほど歩くと「大阪日本民芸館」が見えてきます。
「暮らしの美」をテーマに、日本の民芸品を紹介するEXPO’70のパビリオンとして建てられたものなのだそう。
中庭を囲むように配置された第一から第四までの四つの展示室はそれぞれが階段と回廊で結ばれていて、暮らしに寄り添う美しい道具がずらりと並んでいます。
多くの人々に民芸の良さを伝え、魅了した万博の頃の熱気が今も残っているような感覚すら覚えます。
▲日本の民芸を紹介するEXPO’70のパビリオンとして作られた。
“民芸運動の西の拠点”でもあるのだとか。
自らも栃木県・益子に窯を持ち作品を生み出しながら大阪日本民芸館の初代館長として活躍した濱田庄司、二代目館長でもあり多くの人々に今おな愛され続ける美しい製品を生み出したプロダクトデザイナーの柳宗理を取り上げた特別展は興味深くボリュームもたっぷりです。
途中、ドイツ・BRAUN製の電卓や理科実験の蒸発皿、野球ボールまでもが並ぶコーナーがあり「なんだろうか?」と近くに寄ってみると、柳宗理によるエッセイが一緒に展示されていて、用途の中から必然的に磨かれ生まれる“デザインの美”がそれらを例に挙げ語られていたのです。
「民芸ってなんだか難しそうだ…」そんな風に思われがちでも案外身近なところに民芸の考えに通じるものがあると思うと、ちょっぴり面白く感じて興味が湧いてきますよね。
ミュージアムショップには魅惑の民芸品がずらりと並ぶ
▲ミュージアムショップにずらりと並ぶ民芸品の中で、艶と木目の美しさに惹かれて購入したのは会津若松の拭き漆の飯べらと急須置き。
館内の展示を一通り見終わり受付を併設したミュージアムショップへと戻ってきました。“ミュージアムショップ”といってもここに並ぶのは、愛知の瀬戸焼や出雲の出西窯をはじめとした全国各地の焼き物や、漆器、雑誌・民藝、大阪日本民芸館で開催された過去の特別展のポスターなど。
▲木製飯べらはご飯がくっつきやすいデメリットはあるものの見た目と触り心地が良く使っていてとても気持ちがいい。
普段はさらっと簡単にみる程度ですが、ここには「用の美」が宿る品々が鎮座していて、つい一品一品じっくりと眺めてしまいました。
悩んだ末に手に入れたのは会津若松の拭き漆の飯べらと急須置き。表面の光沢と強調された木目の美しさに惚れました。
▲中央が少し窪んだ急須置き。
全体的に丸っこいフォルムがかわいらしい。
平日の昼下がりだからかそこまで人も多くなく、小さな子どもを連れた家族や年配の方々が中心でのんびりとした時間が流れていました。
そんな静かな時間の中にも、民芸運動とEXPO’70のあの日の熱気が伝わってくる気がするのです。