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雨の降る夜に、「旅と建築」のこと。MIDNIGHT ISSUECAN #03

「MIDNIGHT ISSUECAN」の第三回は「旅と建築」の話です。

建築というのは大元を辿れば、人が雨風や時に強烈な日差しから体を守りながら、生活を営む為にあるものなのかもしれません。

実際のところ、地面を叩き付けるような猛烈な雨が降り、風が吹き荒れる嵐の夜であっても、建物の中にいると守られているような、包み込まれているような安心感を覚え、下手をすれば心地良いとさえ思ってしまうのです。

スクラップアンドビルドだと言われることがある日本の建築でも、全国各地では貴重な建物や昔ながらの面影が残る美しい街並みを残す努力がなされていると思います。そんな素敵な建物たちをを見学するのも旅の楽しみの一つではないでしょうか?

土地を旅する。建築が教えてくれるまちのこと

特に人が暮らす民家はその土地の気候風土や生活文化がよく現れていて見応えがあるものです。
日本の伝統的な民家というと、襖で部屋を仕切る作りや、畳敷きといった内部の特徴が思い浮かびますが、四季折々の自然豊かな外との関わり方も特徴の一つであるように思います。

▲愛知県常滑市にある「廻船問屋瀧田家」の2階部分。
戸を開け放つと建物の内と外の境界が曖昧になり、あたかも一続きの空間かのように感じさせる。

例えば古民家の多くには縁側が設けられていて、その上には深い庇が掛かっていますね。
建物の中と外を緩やかに繋ぐ縁側は中間領域とも言われていて、屋外・屋内の概念を曖昧にさせます。
自然を建物の内部にも取り込み一体的であろうとする工夫ではないかと思えるのです。

地域ごとに見てみると、人の暮らしと馬との距離が近く、冬の寒さが厳しい東北では厩が一体になった曲り家(まがりや)や中門造(ちゅうもんづくり)が見られます。
また、瀬戸内海を中心とした地域では表面を炭化させた焼杉板を外壁に使うことで潮風から家屋を守り長持ちさせる工夫により、独特の街並みが作られています。

▲焼杉板を使った外壁や塀は実用的なだけでなく落ち着いた美しい街並みを作り上げている。

建築巡りも旅の醍醐味

日本の伝統的な建築だけでなく、海外の影響を受けたものや、逆に日本の影響を受けた海外建築家によるものも魅力的だと思いませんか?


例えばアメリカの建築家で、“近代建築の三大巨匠”とも呼ばれるフランク・ロイド・ライトが設計した旧帝国ホテルは、1893年に開催されたシカゴ万博で平等院鳳凰堂をモチーフにした「日本館 鳳凰殿」からインスピレーションを受けたとも言われているんです。

この、通称「ライト館」は残念ながら解体されてしまいましたが、建物の一部は愛知県犬山市の「博物館明治村」に移築されています。

愛知県犬山市の博物館明治村にに移築され保存展示されている旧帝国ホテル正面玄関(通称:ライト館)の外観

▲博物館明治村では左右対称の美しい旧帝国ホテルの建物の一部を見学できる。
明治村では広大な敷地に数多くの貴重な建築が展示されていて、じっくり見ようとすれば1日でも足りないほど。

旅先で出会った建築は、建物そのものを見ているようで実はその背後にある街の歴史や文化を見ているのだとも思えます。

雨が降る夜はついついこんな風に旅と建築について考えたくなるものです。

それでは良い夜を。

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